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議会報告

2022年度決算特別委員会

2022年度決算についての反対討論

2023年10月5日 綿貫康代市議

私は、日本共産党市議団を代表して、2022年度一般会計及び特別会計並びに企業会計諸議案のうち、議案第162号ないし165号、169号、171号、172号、174号ないし181号、183号について反対し、討論を行います。


2022年度は新型コロナ危機によって景気の低迷、生活の困難が長期に及んでいるところに、ガソリン、食料品、電気料金をはじめとした物価の高騰が本市の市民生活と経済に深刻な影響を及ぼしました。岸田自公政権は、アベノミクスと「異次元の金融緩和」に固執し、物価高騰に対してごく一部しか手当てせずに、多くの国が物価高騰対策として踏み切った消費税の減税についても拒み続けました。また、厳しい経営状況に置かれた中小企業・小規模事業者に対する国の支援は乏しく、「不備ループ」という言葉が話題になったように、必要な業者に必要な支援が届かない状態でした。他方で、「軍事費の2倍化」に道を開く敵基地攻撃能力の保有と大軍拡を宣言した「安保関連3文書」の閣議決定を強行し、「専守防衛」をかなぐり捨てた「戦争国家づくり」への道を突き進みました。

このような国の無為無策と逆行に対して、福岡市政に求められたことは、大型開発優先と外からの呼び込み頼みの政治を大もとから改め、市民の暮らしや中小企業・小規模事業者の営業を応援する政治を推進し、地域循環型経済へと転換することでした。

しかし2022年度決算をみると、髙島市長は「都市の成長」を「生活の質の向上」に結び付けるという名目で大型開発と巨大イベントを推進する一方、市民の切実な願いである加齢性難聴者の補聴器購入補助や学校給食費無償化などには背を向け、学校施設の改修や抜本的な水害対策など必要な施策にはお金を使わない、市民に冷たい市政運営がなされていることが浮き彫りになりました。また、長引くコロナ禍と物価高騰のもとで苦境に立たされている事業者への支援も不十分であり、事業継続と雇用維持が困難になり、廃業に追い込まれる事業者をひろげることになりました。


これらの問題について、分野ごとに詳しくみていきます。

第一に、大型開発と規制緩和、イベント行政の問題です。

2022年度、市は人工島の土地処分について「完売!黒字150億円」と発表しました。しかしこれは、青果市場やこども病院、総合体育館などの公共施設を移転させることにより土地分譲全体の約31.6%を市が税金で買い支え、そのうえで残った売れやすい土地だけを売ってようやく黒字になったものでした。しかも、進出企業に立地交付金という名目で最大30億円もの「プレゼント」をつけたり、本来開発業者が負担すべきインフラ整備の肩代わりといった特別優遇をしたりするなど、あの手この手で巨額の税金を投入してきた結果に過ぎず、破たんした事業を覆い隠そうとする姑息な態度です。そのような人工島に決算年度も約55億円が投じられています。

規制緩和によって大量のビルを建て替え、渋滞、避難スペース不足、地価上昇による住民・中小業者追い出しをまねく「天神ビッグバン」と「博多コネクティッド」に、決算年度は合わせて約23億円の税金が投入され、今後天神通線の道路整備には60億円使うことが計画されています。市長は自らの著作で「行政のお金を使わずとも、民間の力で再開発を進めることが可能」と述べていましたが、全然そうなっていません。コロナをきっかけにオフィスビル需要が減る中で、オフィスビルを大量につくるやり方はまさに時代遅れであると言わざるを得ません。

今年度開催された世界水泳福岡大会は、事業費が当初の100億円が225億円へと2倍に、そのうち市の負担は当初想定の35~40億円が120~130億円へと3倍に、それぞれ大きく膨れ上がることが明らかになりました。この事業に決算年度は約17億円の税金が投入されています。市は、世界水泳福岡大会と世界マスターズ水泳選手権九州大会に、合わせて約46万人の来訪者があったと記者会見しました。しかしわが党が審議で明らかにしたように、この数字は1週間滞在したら7人として集計される、飲食施設に一定時間内に来場した人数に開場時間をかけあわせて算出するといった数字のマジックを使ったものであり、わが党がこのことを指摘すると、市は実際の来訪者数は約24万人だったと言わざるを得なくなりました。虚構の数字で市民をごまかし、ありもしない経済波及効果を喧伝する市長の態度は問題です。この世界水泳の失敗に反省もないまま、市長がこれまで市民にも議会にも一切説明してこなかったのに突然の名乗りをあげたのが「大阪・関西万博」です。カジノ建設と一体に進められている、問題だらけの「万博」に市としてブースを出展し、ステージでイベントを開催するなど、本格的に参入しようとしておりますが、市民の税金をまたもや無謀な大型イベントにつぎ込むことは到底許されることではありません。


第二に、医療・介護などの社会保障についてです。

コロナ対策について、決算年度は第7波、第8波の流行で医療ひっ迫が深刻となり、高齢者施設のクラスター発生件数、死亡者数、救急搬送困難事例が過去最悪となるなかで、市民の命を守るために、危機感を持った対応が求められました。しかし、市の対応はそうなっておらず、保健所体制の抜本強化を怠ったことで、感染症対策における保健所本来の機能が果たせない事態を招きました。そして第7波では職員1人1日平均3時間の残業が常態化し、最大180時間もの残業をおこなった保健所職員もいるなど、異常な長時間労働を強いることになりました。また、抜本的な検査の強化や大規模療養施設の設置にも背を向けました。市長は「ポストコロナ。さあ、ここからは経済を回すときです」と市長選挙の公約に書き、国のコロナの5類感染症への引き下げを歓迎するなど、あまりにも危機感がないありさまです。

本市の国保世帯のうち、所得200万円以下の低所得者が決算年度はその83%を占めていました。異常な物価高は低所得層が多い被保険者の経済的負担を増大させており、国民健康保険料の引き下げが求められていました。しかし、決算年度も引き続き高い水準の保険料を被保険者に押し付けました。過酷な保険料のために払えない人が続出し、資格証明書の交付、いわゆる国保保険証の取り上げは、交付数・世帯比とも飛びぬけて多く、20政令市の中で2番目となっています。また、国民健康保険法44条に定められた窓口負担の減免は過去数年間にわたりゼロであり、決算年度も本市では1件も適用がないという異常な運用がされていました。

高齢者の生活は物価高騰に加え、国が進める年金支給額の削減や医療費窓口負担の2倍化によって深刻な状況に追い込まれているにも関わらず、介護保険料は制度開始時から約2倍以上という、史上最高額に値上げされたままの水準で維持されました。保険料は基準額に当たる第5段階で言えば月額7万4699円にも達しており、市民から高すぎて払えないという悲鳴があがっています。また、特別養護老人ホームの入所について、決算年度は福岡市全体で2270人と引き続き多くの方が待たされているにも関わらず、2施設しか整備をしませんでした。さらには、高齢化が進行する中、県や政令市も含め多くの自治体で広がっている加齢性難聴者の補聴器購入補助制度の実現を求めましたが、髙島市長は応じませんでした。コロナで休止中の老人福祉センターの入浴事業について、市は「機能強化」の名で廃止しようとしています。入浴事業は家に風呂がある人でも老人福祉センターの大きな風呂でゆっくりと足を伸ばして入浴する、一緒になった人と懇談するといった役割を果たしており、多くの高齢者の憩いの場となっています。わが党の分科会での質問によって、関係者や利用者から何の声も聞かずに廃止を進めているということが明らかになりましたが、手順も踏まずに入浴事業を廃止することは大問題であり、許しがたいことです。

物価高騰の影響は低所得者層にとりわけ大きな打撃となっており、生活保護の利用者が増えています。しかし、生活保護世帯にとっても基準の連続引き下げと物価高騰が襲い、生存権さえ否定されるような事態が常態化しています。ところが髙島市長は「国において適切に定められたもの」などとして、生活保護の切り下げを受入れ、市独自の夏季・年末一時金支給の要求に対しても冷たく拒否しました。また、近年の異常な猛暑によって熱中症が増え続けているなか、命を守るためにも生活保護利用者のエアコン買い替え費用の支給が求められましたが、市は検討すらしませんでした。さらには、生活保護の申請をためらわせる要因の一つである扶養照会についてもやめようとはしませんでした。


第三に、教育についてです。

髙島市長の開発優先の政策のもとでマンションが林立し、市内各地で過大規模校が生じています。2022年度は29校と全体の13%にも及ぶ深刻な事態となっており、子どもたちはプレハブに押し込められ、運動場でのびのびと遊ぶこともできず、理科室で美術の授業を行っている実態があるなど、学ぶ権利を侵害されています。わが党は過大規模校対策として、繰り返し、マンションなどの開発規制を求めましたが、市長は「規制は困難だ」というばかりで何の手立ても取ろうとしませんでした。

わが党は公共施設を考える会のみなさんとともに毎年学校の施設調査をおこない、市に要望を提出していますが、どこの学校も修繕や対応が必要な箇所が多く見受けられ、脇山小のコンクリート片落下事故などの重大な事態や、危険なアスベスト含有建材が放置されている実態があります。また、決算年度に学校から教育委員会に提出されている施設改良等要望351件のうち、対応済みは25%、対応中を含めても31%に過ぎず、学校施設の改善が大幅に遅れています。多くの学校校舎が築50年を超え老朽化している中、抜本的に教育予算を増やすことが必要であり、わが党はこのことを審議の中で求めましたが、市長は冷たく拒否しました。

物価高騰が家庭を直撃する中で、教育費の負担軽減は子育て世代において最も重要であり、今こそ学校給食費の無償化が求められています。全国の自治体でも無償化が広がりつつありますが、市は食材費高騰分を補てんしただけで、学校給食費の無償化についてはまったく検討すらしませんでした。


第四に、中小企業施策、経済・雇用対策についてです。

市内企業の99%を占め、地域経済を支えている中小企業・小規模事業者が元気にならないと、福岡市の経済は活発になりません。福岡市中小企業振興審議会に提出された「中小企業振興に関するアンケート」によると、物価高騰について「マイナスの影響が出ている」との回答が約7割に上っており、物価高騰対策として緊急に中小企業・小規模事業者向けの支援を拡充することが求められました。しかし、市が行ったのはプレミアム付き商品券事業が中心であり、これは中小企業・小規模事業者への貢献度が曖昧であり、消費の先食いに過ぎません。決算年度から行ってきた燃料費等高騰の影響を受けた事業者支援制度も「燃料費」だけではなく、さらに「資材」や「材料」などの値上げ分にも拡大すべきであると、わが党は審議のなかで求めましたが、市長は拒否しました。また、中小業者が切望している住宅リフォーム助成制度の創設、自治体発注の建設工事や委託業務などに従事する労働者の賃金を確保する公契約条例などについても市長は応じませんでした。


第五に、環境とまちづくりについてです。

命がおびやかされる酷暑、豪雨や巨大台風による甚大な災害が起こるなど、気候危機対策はもはや一刻の猶予もないほど求められており、本市は国よりも10年早い2040年度温室効果ガス排出実質ゼロを掲げていますが、その実行計画はエネルギー消費量の削減目標がなく、再生可能エネルギーの導入目標も8年前の計画と変わっておりません。わが党は、断熱住宅リフォーム助成や学校を始めとした公共施設の断熱化で省エネを促進することを求め、市内で発電する再生可能エネルギーを抜本的に引き上げることなどの具体的な提案を行ってきましたが、市長は目標に向けた具体的な計画を未だに立てようとしていません。

西鉄バスが市内各地で減便や路線廃止をおこない、市民の足に大きな影響が出ています。利益が上がらなければ撤退する西鉄などの民間任せでは、市民の交通権は確保できません。決算年度、市はオンデマンド交通の社会実験を市内各地でおこなっていますが、利用者が少なく、役に立っていません。わが党はたびたび市独自にコミュニティバスを走らせるべきであると求めてきましたが、市長は応じず、民間任せの姿勢を崩しませんでした。


第六に、市政運営のあり方についてです。

髙島市政は市民から反対の声が上がっているにも関わらず、決算年度も自衛隊に若者の名簿を渡し続けました。市は、対象となる若者に周知しているとしていますが、確実に本人に届くはずの郵送による通知や市のホームページのトップへの掲載することなどは頑なに拒んでおり、本人が知らないうちに個人情報が第三者に提供されるという市民の不安は全く払拭されておりません。個人情報の自己コントロール権を侵害するこのような事態を、わが党は断じて認めるわけにはまいりません。

市は2015年以降、市民団体が開く「平和のための戦争展」の名義後援を拒否し続けており、新型コロナの影響で3年ぶりに開催された2022年度の「戦争展」についても名義後援の申請を「不承諾」としました。市は「行政の中立性」をことさら強調し、展示された作品の中に「特定の政治的立場」だと判断するものが一つでも含まれていれば、企画自体を一切後援しないという態度をとることによって、市民の自由な議論を抑圧しており、許されません。

ジェンダー平等社会を実現するためには、男女の賃金格差をなくすことは不可欠な課題です。わが党は、ジェンダー平等実現に向け、女性が8割を占める会計年度任用職員の待遇改善や女性管理職比率の目標を大幅に引き上げることを求めてきましたが、市長は決算年度においても本気で取り組む姿勢を全く示しませんでした。

コロナ禍におけるワクチン接種業務や給付金業務などを、大手派遣会社などの大企業に随意契約で業務委託したことで、コールセンターに全くつながらない、給付金がいつまでたっても届かないなどの問題が噴出しました。本来ならば臨時に職員を増やしてでも対応すべきであった業務を民間営利企業へ大規模業務委託したことにより、労働者に払われるべき賃金がピンハネされ、大企業のもうけづくりに利用されました。また、他都市では同様の業務委託で過大請求による詐取事件も発覚しております。

自民党所属の一衆議院議員であり、市民の間でも評価が分かれる安倍元首相の死去に際して、市は公共施設である市役所のロビーに献花台と記帳台を設置し、国が多額の税金を費やして強行した「国葬」に、昨年の決算特別委員会期間中であるにも関わらず、市長が公費でこれに参加したことは、公正公平であるべき地方自治体のあり方として問題でした。

トラブルが次々と発覚し、国民の多くが不安を感じているマイナンバーカードの所持を事実上強制するような国の動きに対して、個人情報を守る仕組みが整っていないにも関わらず「デジタル社会の基盤となるもの」などと言って、カード取得の有無によって受けられる行政サービスに格差をつけるなどの普及促進に取り組んできたことも言語道断です。

このような国の悪政に対峙して市民の声を代弁するどころか、国と一体になって悪政を推進する異常な姿勢が如実にあらわれた決算年度となりました。


以上、2022年度決算の問題点を見てきましたが、到底認定できる中身ではありません。いまこそ大型開発・インバウンド中心の政策を改め、市民の暮らしと中小企業・小規模事業者応援で地域にお金を回す循環型の経済に転換することが求められております。

以上を述べて、わが党の反対討論を終わります。


以上


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