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議会報告

2008年度予算議会

2008年度予算議会日本共産党の反対討論

2008年3月25日 熊谷敦子議員

私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に付託されている諸議案のうち、議案第37号~41号および44号、45号、47号~53号、55号、56号、59号、62号、63号、70号、71号、73号、74号、76号、77号、80号~82号、89号、91号に反対し、議案第37号および39号については予算組み替えを求める動議に賛成し、また議案第71号については修正案に賛成して、討論を行います。わが党の意見については、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べておりますので、ここではその基本点といくつかの問題について述べます。

周知のように、社会的貧困と格差の新たな広がりが深刻な問題となるなか、自民、公明の福田内閣が初めて組んだ2008年度予算案は、社会保障予算の自然増2,200億円を削減する方針を継続し、後期高齢者医療制度の導入など、福祉や医療を切り捨てるもので、貧困をいっそう広げる内容であります。また、大型公共事業のムダの削減や大企業優遇税制の見直しなどが必要となっているにもかかわらず、大企業への奉仕を続け、5兆円にのぼる軍事費も「聖域」にしています。一方で、国民には消費税増税を押し付けようとしており、こうした逆立ちした財政は許されません。国民の暮らしを守るため、雇用、中小企業の危機打開に重点配分すべきであり、道路特定財源は一般財源化し、暫定税率は廃止して、むだな道路をつくり続ける59兆円の道路中期計画を撤回することが求められます。さらに、食料自給率を50%台に引き上げることを国政の当面の最優先課題に位置付け、その達成にむけてあらゆる手立てをとることを農政の基本にすえるべきです。地球温暖化防止のとりくみも待ったなしの課題となっております。

そうした中、今まさに、自治体が「住民の福祉の増進を図る」という役割を果たすことがこれまでに増して重要となっております。本市においては、一昨年の市長選挙で、「構造改革」路線に追随した大型開発優先と市民犠牲型の前市政に審判が下され、市政をおおもとから転換させることが求められていました。すなわち、大型開発のムダづかいを見直し、医療、福祉、介護、教育、環境、防災など市民生活を最優先する「自治体らしい自治体」づくりこそ吉田市長に求められているのであります。

しかるに、吉田市長の2008年度予算案は、人工島事業推進に212億円もの巨費をあてるなど大型開発のムダづかいと借金増発を温存しながら、「緊縮型」と称して福祉や教育など生活関連予算を切り捨てる極めて冷たい内容となっています。とくに国民健康保険は一般会計繰入金を減額して一人あたり保険料を引き上げ、14万6,000人の署名に背を向けています。市長公約であった少人数学級は新年度拡充せず、こども病院の人工島移転も強行しようとしています。これは、市民を裏切るうえに、暮らしと経済の危機打開にも乏しい内容と言わざるを得ません。また、歳入歳出改革と称して市職員の102人削減や貴重な市有地の売払いなど自治体リストラを進めようとしています。他方、年度末の市債残高は3会計合計で2兆5721億円、市民一人当たり184万円と依然として深刻であります。外郭団体などの隠れ借金が646億円にのぼり、これを含む実質公債費比率は23.0%と危険水域となっています。

以上のように、市民の願いに反する吉田市長の2008年度予算案にわが党は賛同できません。そこでわが党は、一般会計予算案等の組み替えを求める動議を提案しました。これは、税金ムダづかいの大型開発4事業を凍結し、高すぎる国保料の一人1万円引き下げを実現する、最低限の組み替えを求めるものであります。わが党は、組み替え動議に賛成します。

次に、わが党が反対する議案のうち、いくつかの問題について、その理由を明らかにしておきます。

第1は、暮らしと福祉に関わる問題についてです。

貧困と格差拡大がすすみ、暮らしと営業が「底が抜けてしまった」かのような不安と危機にみまわれています。ところが政府は、増税と負担増、社会保障切り捨ての「構造改革」路線にしがみつき、市民生活はいっそう苦しくなっています。こうした国の悪政から暮らしを守るのが地方自治体の仕事ですが、吉田市長の新年度予算案は不十分な内容と言わなければなりません。

まず、国民健康保険についてですが、本市の国保料は、所得割算定基礎額200万円の3人世帯で47万円と全国一の高さとなっており、「高すぎて払いたくても払えない」という声が沸き起こっています。国保世帯の8割が低所得であり、滞納者は増え続け、保険料が取り上げられる資格証明書発行も1万2000世帯にのぼり、命さえ脅かされる異常事態となっています。これに対し、国保料の引き下げを求める請願署名が史上最大の14万6000人をこえ、また国保運営協議会から「保険料の負担軽減に努めるよう要望する」との異例の答申が出されたのであります。払える保険料へ引き下げることは待ったなしです。ところが市長の提案は、一般会計繰入金を減らして一人あたり保険料を引き上げるもので、わが党が再三要求したにもかかわらず市長は何ら改めようとしませんでした。そこでわが党は、国保料を一人1万円引き下げるための予算組み替えと条例修正案を提案したのであります。どんなに厳しい財政でも、市民の切実な願いにこたえることを優先すれば、財源を生み出すことは可能であります。

この4月から強行されようとしている後期高齢者医療制度は、75歳以上のお年寄りを差別する最悪の医療保険であります。その内容が知られれば知られるほど「年寄りは早く死ねと言うことか」「姥捨て山の制度だ」と怒りの声があがり、連日区役所窓口に行列ができ、抗議や問い合わせの電話も殺到しています。高齢者に高い保険料を押し付け、治療内容を制限するなど、わが党は問題点を指摘し、実施の中止を要求しましたが、市長は国いいなりに「必要な制度だ」と強弁し何が何でも実施しようとしています。わが党は高齢者に新たな困難を押し付ける後期高齢者医療制度の中止をあらためて求めるものです。

また、高齢者の介護保険料の負担軽減策は不十分であり、特別養護老人ホームの新設がわずか3ヵ所では6000人以上に激増している入所待ちの解消はほど遠く、介護ベッド等の取り上げに対する救済策もなく、介護が必要なお年寄りを抱える家族の切実な願いにこたえるものにはなっていません。

生活保護行政について、憲法25条の生存権を踏みにじる申請権侵害や保護切り捨てなど、本市の保護抑制政策はいまだ改められておらず、保護行政をめぐる不正をただすためにも抜本的改善が強く求められていますが、市長にその姿勢が見えません。本市の障害者に対する負担軽減策は不十分であり、障害者施設・小規模作業所に対する補助金とあわせていっそうの拡充が必要です。市営住宅は、入居希望が増えているにもかかわらず新設を1戸もしないのは公的責任を放棄するものであります。

わが党は、低所得者向けの公共料金減免や福祉灯油、雇用対策の強化などを要求しましたが、市長からまともな答弁はありませんでした。また中小企業対策は貧弱です。これでは貧困打開に全く無策だと言わざるを得ないのであります。

こども病院の人工島移転については、先日患者家族のみなさんが5万6390もの署名を提出された通り、市民の反対世論が日に日に高まっています。人工島に移転されれば市内の小児医療の配置バランスが崩れ、空白地域が生じることから多くの小児科医師が強硬に反対していること、こども病院の患者とその家族、医師や看護師にも多大な苦痛を押し付け、子どもの命に関わること、また交通の利便性や災害時の問題など、わが党は人工島移転に何の道理もないことを指摘してきました。市長はこども病院の人工島移転に固執する態度をやめ、きっぱり断念すべきであります。

第2は、教育および子ども行政についてです。

わが党は、憲法に基づいた教育を推進すべきとの立場から、詰め込み教育をやめ、全国一斉学力テストへの参加を拒否するよう求めましたが、教育委員会は改めようとしておりません。少人数学級について、市長は小学校全学年実施の公約に反し、新年度まったく拡充せず後退していますが、子どもや保護者、学校関係者の願いに背くものです。また特別支援教育の体制も不十分です。こうした教育条件の整備を進めるためには教育予算を抜本的に増やすことが不可欠ですが、教育費は一般会計のわずか6.9%であり、増額された分の多くは校舎等の耐震対策にあてられ、過大規模校の分離・新設や普通教室への冷暖房設置は拒否されています。

公立保育所について、市長は民営化を進める方針を示しましたが、これは明白な公約違反であり、保護者を完全に裏切るもので、わが党は断固抗議するものであります。もともと他都市に比べ極端に少ない本市の公立保育所を実質的になくすことは認められません。また市長は保育所の新設や認可化を進めようとしていませんが、これでは875人にのぼる待機児の解消はできません。

児童館設置について、市長は自らの公約であることを否定し、その必要性について認めようとしていません。専門職員のいる児童館を身近なところに設置し、子どもたちの安全・安心な居場所をつくることはいまや常識であり、市長の児童館を拒否する態度は許されず、まず各区に設置することを強く要求します。

妊婦健診の公費負担の拡充が実現しますが、安心して産み育てられるよう、いっそう拡充するとともに、子どもの医療費助成制度を中学生まで広げることを求めます。

第3は、人工島事業など大型開発と財政再建についてです。

まず人工島事業ですが、市長は「大胆な見直し」との選挙公約を反故にし、市民の願いに背を向け、人工島事業を推進すると宣言し、新年度212億円もの予算を付けました。市民からは「結局前の市長と同じだ」との手厳しい声があがっています。

わが党は新年度80億円をつぎ込む水深15メートルの岸壁・航路の整備や新たな埋立の中止を求めましたが、いまでも土地売却に四苦八苦しているのに、さらに100ヘクタール以上もの広大な土地が売れるという市長の計画はまさに絵に描いた餅であります。

とりわけ問題なのは人工島に進出する企業に一社最大10億円も投げわたす立地交付金制度です。これは破たん救済の新たな税金投入のしくみに他なりません。経済振興というなら、大企業などの誘致に税金をばらまく姿勢を改め、わが党が提案した10億円の財政措置で100億円の波及効果がある住宅リフォーム助成制度のような、中小企業と家計に軸足をおいた施策こそ必要であります。

そもそも人工島事業は、必要性がないのに市民の反対を無視して着工され、10年以上にわたって埋立が続けられ2700億円もの事業費がつぎ込まれてきましたが、わが党の警告通り、造った土地が売れずに博多港開発工区だけでも347億円もの税金が投入されました。埋立を続ければ莫大な借金がさらに膨れあがり、市長はこども病院や青果市場の移転、都市高速道路の延伸など破たん救済も進めようとしており、果てしない税金投入の泥沼となるのは避けられません。市長の責任は重大であります。

また、市長は九大学研都市構想や渡辺通駅北区画整理・再開発事業、五ヶ山ダムや都市高速道路の建設など、不要不急の大型開発を推進し、新福岡空港建設も反対を明確にしませんでしたが、前市政を引き継ぐ開発行政を進めることは許されません。

ムダな大型開発を進めれば本市の借金財政を再建することはできません。市長は市債残高を減らすと言いますが、一方で大型開発の借金増発をやめないならば、そのしわ寄せは市民生活に及ぶのであります。すなわち、市税などの取り立て強化と差押え、福祉や教育の切り捨てや市民負担増、公共料金の値上げ、貴重な市有地の投げ売りなどであり、「官から民へ」と称した業務の民間委託化や派遣社員の導入、職員の大量削減は、市民サービスの後退と市職員の労働強化を招くものであり許せません。市立高校授業料や幼稚園保育料、駐車場使用料の値上げも認められません。こうしたグランドデザインの具体化はやめ、撤回すべきです。

第4は、公平公正な行政運営と平和行政などについてです。

わが党は公共工事を食い物にする政官業の癒着を根絶し、市長と財界との関係を改めるよう求めましたが、市長にその姿勢が見えないのは問題です。

同和行政について、本市がいまだに1億6,000万円もの同和予算、ならびに1億5000万円の同和教育予算を温存し、解同福岡市協議会への補助金2,950万円も継続していることはわが党の認めがたいところです。

市長は先月、米イージス艦プリンストンの博多港入港を許可しましたが、核兵器搭載可能な米軍艦の入港と軍事利用を容認する態度は、市民の安全を守る責任を放棄するもので許せません。また市長はアメリカの戦争に市民を強制動員する本市国民保護計画の撤回を拒否しました。日本共産党は、戦争放棄を誓った憲法の平和原則を壊すあらゆるたくらみに断固反対するものであります。

次に、留守家庭子ども会条例改正案について意見を述べます。

市長提出の議案第68号、留守家庭子ども会条例改正案は、公約に沿って基本利用料を無料に戻すものであり、わが党は賛成し、成立を願うものであります。ところが、自民党とみらい福岡が反対し、これにふくおかネットワークも加わって、再び「無料化」を否決しようとしております。

自民党、みらい、ネットワークが可決させようとしている議案第91号は、基本利用料を存続させるものであります。提案者はわが党の質疑に対し「受益者負担は当然」などと答弁しました。しかしながら、子育ては社会全体で担うものであり、子育ての経済的負担の軽減こそ時代の要請であります。子育てと仕事の両立にがんばりつつも経済的な不安を抱える保護者を「受益者」などと決めつけることは断じて認められません。ましてや、子育て家庭の多くは、不安定な雇用や低賃金、高騰する子どもの教育費など将来への不安を抱えているのが実態であり、提案者が言うように「裕福」では決してありません。事実、利用料導入が保護者に重い負担となったことは、1,000人を超える児童が退会せざるを得なかったことが証明しているのであり、これを当然だと切り捨てるとはあまりにも冷酷非情だと言わざるを得ません。

自民党は「低所得者には減免で配慮しており、年収550万円以上の比較的裕福な家庭は利用料を払うべきだ」などと説明していましたが、わが党の質疑によって、その論拠は崩れました。すなわち、減免制度は就学援助世帯を対象にしたものであって、年収416万円でも利用料を払っている家庭があることが判明しました。また、減免されている家庭でも利用料導入で負担額が2.5倍になりました。自民党、みらい、ネットワークはこうした事実を突きつけられてもなお、利用料徴収にこだわっているのであります。

自民党、みらい、ネットワークは、利用料を留守家庭子ども会のプレハブの建て替え・増築などの財源に充てるとも言われました。しかしながら施設整備費用を利用者に負担させるなどということが、保育やその他の子ども行政で他にあるでしょうか。まったくの邪道であります。しかも、充実させるなら利用料がもっと必要などと言って、値上げへの「一里塚」となりかねないのであります。値上げされれば、必要な児童の入会をさらに遠ざけ、カギっ子を増やすのは避けられません。

40年の歴史を持つ本市の留守家庭子ども会をいっそう充実させることは市民の総意となっています。本来、施設整備などの充実に必要な財源を生み出すために、税金のムダづかいを厳しくチェックし正していくことこそが市議会議員の役割であります。しかるに、自民党とみらいは、人工島などムダな大型開発を自ら推進し、市の借金を2兆6000億円にも膨らませ、無責任にもそのツケを子どもたちと保護者に押し付けるのであります。今回、ネットワークがその自民党、みらいに同調したわけですが、どんなに言い訳されようとも受益者負担の立場に他ならないのであります。これは市民の厳しい審判が下されることになるでしょう。

もともと、利用料反対の56,000署名を無視して導入を強行したことが間違っていたのであって、市長選と市議選で示された民意にしたがい元の無料に戻すことこそ筋であり、子育て世代の願いにこたえるものです。それにあえて逆らう自民党、みらい福岡、ふくおかネットワークの提案にわが党は断固反対するものであります。

留守家庭子ども会事業について、わが党は、全児童放課後対策と一体化することのないよう市長に強く要望するとともに、低所得者の負担軽減をいっそう図り、大規模化を解消するための施設の改善・増築、指導員の増員や体制強化を推進して学年延長を含む充実にとりくまれるよう求めるものであります。

以上で、わが党の討論を終わります。

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