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議会報告

2011年12月議会

決算諸議案に対する反対討論

2011年12月13日 星野美恵子議員

私は、日本共産党市議団を代表して、2010年度一般会計及び特別会計並びに企業会計決算諸議案のうち、議案第137号~139号、141号、144号、145号、147号~149号、151号、153号~157号に反対して討論を行います。


周知のように、2010年度は、政権交代によって誕生した民主党・鳩山内閣が米軍普天間基地問題で自公政権時代と変わらず基地たらい回しを沖縄県民に押し付けたことなどによって早くも行き詰まり、菅内閣へと替わりました。政府予算も大型開発と大企業減税、軍事費など肝心なところを聖域にして温存する従来型から抜け出せず、社会保障削減路線を是正する措置も取りませんでした。こうしたなか、10年以上続く賃下げ、労働者の3人に1人は非正規雇用、内需が冷え込みGDPが伸びない一方で、大企業の内部留保が244兆円と空前のカネあまり状態と、まさに新自由主義と構造改革路線が完全に行き詰まり、政治と経済が閉塞状況に陥っていたのであります。また「地域主権」の名で、住民福祉の切り下げや地方自治の破壊など地方切り捨て路線が加速されました。こうした中で本市の行財政運営に求められていたのは、雇用と中小企業を守り、市民の暮らしと福祉を守るという自治体本来の使命を果たすことでしたが、本市の2010年度当初予算は、無駄な大型開発に巨額の予算をあてる一方で、市民に重い負担を課し、福祉や教育など生活関連を抑制する市民犠牲型でした。また、こども病院の人工島移転が強行されようとしていました。こうした市政に対する不満と怒りがいよいよ高まり、前市長にわずか1期でノーの審判が下されたのであります。ところが、就任した高島市長も根本的な予算補正を行わなかったため、2010年度決算は当初予算の悪しき特徴がそのまま示されております。


歳入についてみると、厳しい雇用情勢等の影響を受け個人市民税が前年度比32億円も減少した一方で、地方交付税の増額は19億円余にとどまり十分補てんされていません。市債は2年連続増額の729億円、一般会計に占める割合が9.6%となり、借金頼みとなっていますが、財源不足を将来へのつけ回しや市民犠牲に押し付けるやり方は許されません。

歳出決算をみると、福祉、医療、介護、保育、教育など市民生活関連の施策が抑制、縮小されたことが示されています。国民健康保険料を大幅に引き上げ、入所待ちが深刻な保育所と特別養護老人ホームの整備をわずかにとどめ、教育費を減額し、安定した雇用拡大と中小業者の仕事確保の対策は極めて不十分など、暮らしや教育に関わる分野で市民の願いに背を向ける一方、人工島事業推進に131億円も充てるなど、財界が喜ぶ大型開発には湯水のように税金・公金をつぎ込んだというのが、歳出決算の最大の特徴となっています。

借金総額は3会計合計で2兆4,934億円、市民一人あたり174万円と、政令市の中で大阪市についで2番目です。さらに外郭団体などの隠れ借金が438億円もあり、借金財政は依然として極めて深刻です。

以上述べてきたように、2010年度決算は、市民犠牲と大型開発優先を押し進めたものと言わなければならず、わが党はこのような決算諸議案を認定することはできないのであります。


3月11日の東日本大震災と福島原発事故を契機に、国民のなかに政治や社会への見方、生き方に対する大きな変化が起こりつつあります。「自己責任」論を乗り越え、温かい社会的連帯を求める変化が生まれています。地方自治体にとっても、災害への備えや防災のまちづくりを行政の土台に据えること、危険な原発から撤退し自然エネルギーに転換すること、何よりも住民の命と暮らしを守ることを最優先の使命とする政治へ転換することが求められております。そうしたときに、「アジアのリーダー都市づくり」「稼ぐ都市」などと言って、市民の暮らしや福祉をかえりみず、相変わらずの開発路線に固執する姿勢では、時代錯誤のそしりを免れないのではないでしょうか。市民の声に真摯に耳を傾け、それに真正面から向き合う、そうした姿勢を持たない政治に未来はないということを指摘するものであります。


次に、わが党が反対する諸議案のうち、主な問題について、その理由を明らかにしておきます。


第1は、防災と原発問題についてです。

もとより、住民の命と財産を守るのは地方自治体の重要な任務であります。東日本大震災を目の当たりにして住民はわが街は大丈夫かとの不安を強めています。わが国は世界でも有数の自然災害の多い国であり、本市においても近年、地震や集中豪雨など自然災害が起きています。災害に備え、被害を最小限に抑え、犠牲者を出さないための防災対策をハードとソフトの両面でしっかり進めることが自治体に求められます。ところが本市の地域防災計画は巨大地震・大津波を想定しておらず、木造戸建住宅は40%しか耐震化されておらず、また石油など危険物貯蔵所施設の耐震化率も58%と低く、いざという時の頼みである消防人員の充足率は2010年度89%にとどまっています。繰り返し浸水被害が発生した樋井川の水害対策はいまだ完了していません。災害に強いまちづくりを進めるよう要求するものです。

また、日本史上最悪となった福島原発事故が発生して以来、市民は原発の危険性に不安を抱き、原発依存のエネルギー政策からの転換を願っていますが、市長はいまだに九州電力に玄海原発の再稼働中止や廃炉を求めていません。この態度は極めて重大であります。


第2は、こども病院の人工島移転問題についてです。

市長は今年1月、医療や建築など専門家と患者家族、市民も加わった「こども病院移転計画調査委員会」を立ち上げました。同委員会は前市長時代の人工島移転を決定したプロセスについての合理性、妥当性を調査し、様々な疑問を指摘した上で、「妥当性あり」との結論が出せず、両論併記とした報告書を市長に出しました。報告書は、現地建替え費用を1.5倍に水増しした経緯について「手続き上問題があった。市に対して猛省を促した」と述べ、また「市が行ってきた意思決定のプロセスに対し、納得できない、疑念を拭い去れないという意見があることを市は重く受け止めていただきたい」と厳しく指摘しました。さらに移転先候補地の比較も行った結果、多くの委員が防災面や交通アクセスなど人工島のデメリットを指摘しました。ところがその後、市長は調査委員会の議論をオープンにしたから市民の理解が得られたなどと開き直り、人工島移転の決定を一方的に表明し、前市長時代と何一つ変わらない「新病院基本構想」を強行しています。これに対して多くの市民が「白紙からの見直し」という公約と違う、裏切られたと怒りの声をあげているのも当然です。こども病院が人工島に移転されれば、災害時の対策でも、緊急搬送や通院時の交通アクセスの問題でも、子どもの命を守れなくなるとの強い懸念があります。わが党は移転決定に厳しく抗議するとともに、子どもの命を守るため移転の中止を強く求めるものであります。


第3は、福祉、医療、介護など市民生活に関わる問題です。

国民健康保険は、格差と貧困が広がる中、すでに重い負担となっていた国保料が2010年度、標準的世帯で15,900円も値上げされました。当局は加入世帯の平均所得の減少を理由にしましたが、決算を見れば、一般会計繰入金を予算額から9億円も減額し、とりわけ法定外繰入を前年度と比べて6億3000万円も減らしたことが判明しました。国保料が高すぎて払いたくても払えない16,000世帯から保険証を取り上げ、生活費を含む預貯金など1,900件7億円もの差し押さえを強行する無慈悲な国保行政を抜本的に改めるべきであります。生活保護を必要とする人が増えているのに保護開始世帯が前年度と比べて減り、廃止世帯が増えたことは、保護費が徹底的に抑制されたことを示しています。特別養護老人ホームの待機者が年度当初7,517人に上る非常事態だったにもかかわらず新設はわずか5箇所269人分にとどまりました。民主党政権が廃止を公約した後期高齢者医療制度は高齢者に一人あたり73,446円もの高い保険料を課し、やらないと言っていた短期証発行を始めたことは問題です。

市営住宅は、応募倍率が高齢単身者で33.1倍、一般でも18倍と入居希望者が殺到していましたが、新設一戸もありません。10年前からの新設をしない方針に固執するのは異常です。


第4は、子ども、子育てと教育についてです。

保育所は、年度始めの時点で待機児が489人、未入所児童数がついに1,000人を超えていたのに、新設は2カ所210人分にとどめ、既存保育所に詰め込みの定員増を押し付けました。3カ所の公立保育所で民営化を強行しました。留守家庭子ども会は数年前から100人を超す大規模化が問題となっていますが、解消の手立ては極めて不十分でした。わが党は中学卒業までの子どもの医療費無料化を提案しましたが、入院費のみ小学6年生までの拡充にとどまりました。市民が長年求めている児童館設置に背を向け続けていることは許されないものです。

少人数学級の実現を求める世論に押され小学4年生まで拡充した一方で、学校校舎・体育館等の改修・改築など予算を伴う事業が続いているのに、教育費が減らされ、一般会計の6.82%とピーク時の半分以下、最低水準にとどめました。その結果、校舎の窓サッシの落下事故が相次ぎ、教職員の過重労働は一向に解消されず、子どもたちが待ち望んでいる教室エアコン設置に背を向けるなど、現場に多大な困難をもたらしているのであります。


第5は、雇用と経済対策についてです。

貧困と格差が問題となっており、暮らしの不安を解消するために安定した雇用を抜本的に増やす対策が求められていましたが、2010年度本市の雇用対策は国の「緊急雇用対策」に伴って短期、非正規を若干増やしたばかりで、ワーキングプアの拡大に拍車をかけたのであります。保育や介護など人手不足が深刻な分野での正規職員を拡大する手立てもありませんでした。

地元経済の主役である中小企業・業者が苦境にある中、仕事を確保するための施策として、住宅リフォーム助成制度の創設を求める声が高まっていたにもかかわらず、実施されませんでした。中小企業対策費は22億円程度、一般会計のわずか0.3%にすぎません。

農漁業については、安全、安心な食料の安定供給や国土の保全のためにも基幹産業にふさわしく農林漁業予算を拡充すべきでした。


第6は、大型開発の問題についてです。

2010年度、土地区画整理5事業に37億円、都市高速道路に約19億円、五ヶ山ダム建設関係21億円など大型開発に莫大な事業費が費やされました。

なかでも本市最大の開発である人工島関連事業費は前年度を上回る131億円となりました。埋立に66億円もの事業費が注ぎ込まれ、これまでの総額は3,000億円を超えました。市工区の土地は2010年度一件も売却できず、銀行から借金返済を迫られ慌てて年度末に新青果市場用地を買い取るなど、税金による土地購入やインフラ整備など各局を動員したのであります。それでも土地処分の見通しは立たず、深刻な行き詰まりに直面しています。税金は使わないとしていた人工島への税金投入は、こども病院などの土地買い取りや公共事業など507億円にも達しました。一方で、市といっしょになって人工島事業を推進してきた銀行はその責任が免罪され、総額280億円もの貸付利息を得たのであります。今回決算が示しているのは、人工島のこれ以上の埋立てと税金投入を今凍結しなければ、破たんの穴がいっそう広がり、その救済のためにさらに果てしなく税金を投入し続ける泥沼から抜け出すことができないということであります。にもかかわらず市長は、自ら設置した第三者委員会「未来フォーラム」の提言を受け入れる形で、土地の賃貸方式導入や立地促進交付金の増額、新たな大型箱モノなど、まさになんでもありの救済策に乗り出そうとしています。人工島事業のムダづかいを続けることにわが党は強く反対するものです。


第7は、行財政改革の問題です。

本市の財政状況は、実質公債費比率などの指標は若干改善されているように見えますが、これは借金返済を最優先にして市民生活を徹底して後回しにしてきた結果に他なりません。すなわち、1994年に着工された人工島事業をはじめ、歴代市長がムダな大型開発を推進して市債を大量発行し、その借金返済が近年集中して、公債費が9年連続で1,000億円を超え、2010年度一般会計歳出の14.2%を占めていることに見られるように本市財政に重くのしかかっているのであります。こうした財政難を口実に「財政健全化」などと称して、福祉や教育の経費削減や、市民負担増が次々と強行されてきました。前市長が進めた「財政リニューアルプラン」は、公立保育所の民営化や公の施設の指定管理者への民間導入、補助金カットなど、公的責任を放棄して子どもや高齢者、障害者など市民生活関連の経費削減を進め、また市民に対し市税や各種保険料などの重い負担を課し、払いたくても払えない市民を悪質滞納者だと追いつめ、無理な差し押さえまでして取り立てる冷酷非情な「増収対策」に躍起になってきたのであります。

市当局は扶助費や人件費の増加が本市財政を逼迫させているかのように言われますが、そもそも扶助費など社会保障費は、どんなに財政難であっても最優先して措置しなければならないというのが憲法25条の生存権の精神であります。また本市の人口あたり職員数も、人件費の普通会計に占める割合もすでに政令市で最も少なく、公務職場で様々なひずみを生じさせているのが実態です。職員から悲鳴があがっているのに耳を貸さず、さらに削減しようという姿勢は極めて問題であります。一方で、「選択と集中」などと言って新たなムダづかいと借金増発の道を突き進もうとしていますが、言語道断であります。


第8は、清潔で公正、民主的な市政についてです。

本市においては汚職腐敗事件が繰り返し発生していますが、何よりも市長をはじめ市幹部と財界との癒着と馴れ合いは許されるものではありません。

同和対策関係決算は前年度から増額して1億2,706万円が充てられ、部落解放同盟福岡市協議会に2,252万円の補助金が出されています。部落問題は基本的に解決しており、こうした特別扱いは市民の理解を得られないものです。

市民の安全を脅かし、福岡の街を戦争に巻き込む港湾、空港の軍事利用は断じて許されません。しかしながら、2010年度も、米海軍第7艦隊の旗艦、1万9200トンの「ブルーリッジ」が、5月の連休中に博多港に入港しました。憲法記念日の3日、「安保改定50年を祝う」として同艦の音楽隊が博多どんたくパレードに参加しましたが、本市がこうした軍事的アピールに協力したことにわが党は抗議するものであります。また、米軍板付基地の即時返還を強く要求すべきです。

最後に市民参加の問題についてです。前市長はこども病院移転問題で市民の意見をまったく無視し、住民投票の実施さえも拒否し、市民の怒りが沸騰し、選挙でノーの審判が下されました。高島市長は市政の大事な問題などについて第3者委員会を次々つくって検討、審議を丸投げし、あたかも市民の意見を聞いたようなふりをして結論を押し付ける手法をとっていますが、「市民の声が反映しない」と批判され、職員からも不信の声があがっています。こうした独断的で反民主的な市政運営は許されないことを強く指摘するものであります。


以上で2010年度決算に対するわが党の反対討論を終わります。

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