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議会報告

2012年12月議会

12月議会の反対討論

2012年12月21日 星野美恵子議員

私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に提案されている諸議案のうち、議案第188号~198号、200号~202号、228号、229号、231号、232号、235号~239号、241号、242号、244号、246号、251号~255号、264号、265号に反対し、討論を行います。


まず、議案第264号、福岡市基本構想について、及び議案第265号、第9次福岡市基本計画についてです。

わが党が反対する理由の一つめは、今回基本構想及び基本計画が反省も総括もなく歴代市長の「アジアの拠点都市」づくりを継承していることです。「アジアの拠点都市」は、25年前桑原市長によって基本構想に盛り込まれ、その後、人工島建設事業や九大学研都市構想に具体化され、新福岡空港構想まで打ち上げるなど、大型開発プロジェクトが次々と推進される出発点となったものです。大型開発の財源として大量の市債を発行してきた結果、市民一人あたり借金が一時200万円近くに達するなど、政令市2番目の借金財政となりました。大型開発の推進によって大企業・大手ゼネコン・大銀行が大儲けした一方で、国の経済失政と相まって、失業者は増え、中小企業の倒産・廃業が相次いで、市民所得は落ち込み、家計消費も冷え込んだというのが実態です。25年間の市政を総括するなら、この路線の破たんを認め、きっぱり手を切ることが一番肝心です。ところが、高島市長が出してきた基本構想及び基本計画は、何の総括も反省もなく、無批判に「アジアの拠点都市」をそっくりそのまま盛り込んだばかりか、いっそう推進する方向を打ち出したのであります。

二つめに、開発優先・財界奉仕の「都市の成長」路線が柱になっていることです。基本計画の3「都市経営の基本戦略」には「都市の成長」として「都心部の機能やゲートウェイ機能など、都市基盤を充実する」ことが打ち出されています。本市最大の開発である人工島事業については、「未来フォーラム」の「提言」を受けて、拠点体育館や「新たな公共交通」と称した鉄軌道の導入、「核となる公共施設の整備」などが打ち出されています。また、須崎ふ頭を人が集まる都市的エリアにするなど湾岸部を大規模に作りかえる「博多港長期構想」もすでに具体化されています。さらに、天神と博多駅、ウオーターフロント地区の「新・福岡都心構想」についても、税金も使って再開発を促進する「特定都市再生緊急整備地域」の指定を国から受けるなど、高島市政のもとで財界の意に沿った大型開発プロジェクトが次々推進されています。最近も、新たな天神通線の整備や天神明治通り沿いビルの再開発が報道されています。市長は、開発によって都市が成長すれば、観光集客や企業誘致が進み、生活の質の向上につながるなどと言われますが、その根拠は何一つ示されていません。外需頼み、呼び込み型の経済対策では地域経済の真の活性化につながらないことははっきりしています。経済成長というなら、この従来路線を転換し、内需拡大策こそ不可欠です。

三つめに、市民犠牲の行革を推進することです。基本計画の5「基本的な考え方」には「このままでは重要施策の推進や新たな課題への対応のために使える財源が大幅に減少していく見込み」だとして「これまでの行政運営の仕組みや発想、手法を抜本的に見直します」と述べています。この10月には「行財政改革プラン素案」が公表され、12月議会には101項目からなる「財政健全化に向けた改革実行検討項目」が報告されました。すなわち、先に述べたような大型開発プロジェクトを推進するための財源を確保するために、教育、福祉、医療、文化などありとあらゆる市民サービスを「スリム化、効率化」の名で切り捨てるものです。具体的には、私学助成の廃止、九州交響楽団補助金のカット、市立幼稚園の廃園、がん検診の自己負担増、高齢者・障害者への個人給付の見直し、公共施設の高齢者利用料減免の見直しや駐車場有料化、子育て支援制度の再構築、スポーツ大会開催・出場補助金のカット、市営渡船の減便、歯科急患診療所の見直し、PTA協議会補助金のカットなどが挙げられています。「コンパクト化」を口実に六本松に移転する少年科学文化会館から文化ホールをなくそうとしています。切り捨てに対する怒りと不安の声が各方面からあがっており、市長のもとにも届いているはずです。何の責任もない市民に犠牲を押し付ける行革路線は許されません。

四つめに、暮らし・福祉の充実をねがう市民に背を向けるものだということです。基本計画には望ましい姿として分野別目標が掲げられていますが、抽象的で暮らしの実感に乏しい一方で、真に市民が求める施策がほとんど盛り込まれていません。例えば、高すぎて払えない国民健康保険料の抜本的引き下げや、まったく足りずに入所待ちが増えている特別養護老人ホームや保育所の整備、わずか一つしかない児童館の増設、教育では少人数学級の全学年実施や教室エアコン設置などは、市民の切実な願いであり、他の政令市と比較しても本市の遅れは重大であります。ところが、基本構想及び基本計画は、自己責任と言わんばかりに「自律」「自助」が強調され、健康で文化的な生活、豊かで安心できる暮らしを保障する行政の責任を大幅に後退させるものとなっています。住民の福祉の増進を図るという地方自治体の本旨にそった目標に改めるべきです。

五つめに、今回基本構想及び基本計画に市民の意見が十分反映されていないことです。審議会が行った市民意見募集には批判的意見もかつてなく多数寄せられましたが、市長の意向に反する意見については市当局が「原案どおり」などと却下して、無視したのであります。これで果たして市民の意見を反映したものと言えるのか、甚だ疑問であります。市民の意見を聞かない姿勢は住民自治の精神に反するものと言わなければなりません。

以上の通り、市長提案の基本構想及び基本計画は土台から間違っており、わが党は賛成できません。


次に、議案第251号、地方独法福岡市立病院機構第2期中期目標案についてです。

本議案は、来年度からの5年間の医療等サービス内容、効率化、財務改善などの目標を定めるとともに、人工島に移転されるこども病院の早期開業を求め、医療水準の向上や経営の効率化、小児医療及び周産期医療のさらなる充実を図ることなどを求める内容となっています。しかしながら、西部地域からの二次医療患者数が現在の4,984人から、移転後には1,195人へと4分の1に激減する見込みであることが、「二次医療連絡協議会」に提出された資料によって明らかになりました。ベッド数も260床の認可が下りず、233床にとどまっており、毎年の赤字が想定外に膨れ上がるのは必至であります。また、人工島の新病院に行けない多くの患者の受け皿は何も見通しが立っておらず、市長が市民に約束した「現地周辺の新小児科」も何も具体化されず、市民から「ウソつき市長」とまで言われています。市長がこれらの患者を切り捨てて新病院の着工を強行したことに、わが党は強く抗議するものであります。さらに、中期目標案には災害時の対応についても極めて不十分な内容しか記載していません。このように、新病院基本構想で定めた前提が崩れているにもかかわらず、こども病院の人工島移転を計画通り推進することを病院機構に求める、無責任な中期目標案は撤回すべきであります。


次に、議案第231号、福岡市グリーンアジア国際戦略総合特区推進条例案及び、議案第229号、市税条例改正案についてです。

今回市長は、アジアの活力を取り込むなどと言って、国から認定されたグリーンアジア国際戦略総合特区について、特定の法人に対して、3年度分の固定資産税及び都市計画税を免除する制度を創設することを提案しております。物流や観光など高島市長が力を入れる業界の儲けづくりのために、すでに港湾施設や道路など様々なインフラ整備が進められており、これに加えて企業の設備投資にかかる税金までまけてやるというものです。市長は「福岡市に企業を呼び込んで税源の涵養をしていく」などと言ってきましたが、税収が増えるどころか、市の支援を受けて儲けた企業から税金を取らない、逆に市税から立地交付金を差し出すというのですから、デタラメです。明らかな特定業界への優遇税制は認められません。

したがって、わが党はグリーンアジア特区関連議案に反対致します。


次に、議案第254号及び255号、埋立造成地の処分議案についてです。

今回議案は、人工島のみなとづくりエリアの港湾用地、1.9ヘクタールを株式会社上組に、2.3ヘクタールを山九株式会社にそれぞれ分譲するものです。この土地はこの数年、分譲先を公募してきたものの売れ残っていたため、処分単価を今回平米あたり95,900円あるいは96,900円へと大幅に引き下げたのであります。もともと「人工島は独立採算」として当初計画された単価は13万円でしたが、5度目の人工島事業見直しによって処分単価の引き下げを公表し、今回さらにそれを下回る価格まで値切られたということに他なりません。一方、建設単価は11万7,252円ですので、2件あわせて、なんと8億9,000万円の赤字であります。これに加えて立地交付金が土地取得費の30%ですから、10億円以上が市の持ち出しになります。採算を維持しようと思えば土地は売れず、単価をどんどん引き下げていけば、売れば売るだけ赤字が出る、当局の試算でも410億円の赤字という負の財産を抱えることになるのであります。わが党は人工島の埋立地に需要がないことを再三指摘してきましたが、市長、当局、議会の推進勢力は「福岡市の財産にする」などと言って強行し、すでに膨大な負債を抱えているにもかかわらず、今後も売れない土地を造り続け、その巨大な赤字の穴埋めに貴重な税金をさらに注ぎ込もうとしています。まさに無責任極まりないと言わなければなりません。

したがって、大幅な採算割れの価格で土地を処分する今回議案にわが党は反対致します。


次に、議案第253号、第1給食センター整備運営事業契約議案についてです。

本議案は、博多区東平尾に建設予定の第1給食センターの設計と建設、開業後15年間の維持管理と運営などの業務を一括委託するPFI契約を、株式会社東洋食品を代表企業とする特定目的会社と99億円余で締結するものです。わが党は、PFI手法の破たん事例も示し、給食センターの建設と管理運営に対する行政責任を放棄して、民間営利企業に丸投げする問題点を指摘しましたが、教育委員会はまともに答えないばかりか、新施設のレイアウト図さえ示さず、杜撰な計画であることが浮き彫りになりました。「食育研修室」なる600席のホールを整備するとのことですが、目的も利用頻度もまったく曖昧であり、必要性のない過大な施設だと言わなければなりません。現在センターで調理業務に従事するすべての給食公社職員の再雇用の保障はありません。そもそも、給食センターの再整備計画は現在の4か所を3か所に集約し、一ヵ所最大1万3,000食をまかなうという異常な大規模化を進めるものですが、給食の安心・安全にも、食育の観点からも、逆行する大問題であります。教育委員会はPFI業者をモニタリングするから問題ないかのように言いますが、大規模な食中毒事件が起きてからでは遅いのであります。契約は撤回し、直営・自校方式に転換すべきです。

したがって、わが党は、第1給食センターPFI契約議案に反対します。


次に、議案第237号、西部地域交流センターに係る指定管理者の指定についてなど、公の施設の指定管理者の指定議案、8件についてです。

わが党は、公の施設の指定管理者制度について、営利目的の民間企業にゆだねれば行政の責任があいまいになり、住民と議会によるチェックができにくくなるとともに、サービスの低下や住民負担の増加、個人情報の漏えいの危険、コスト削減を名目にした従業員の低賃金・非正規化などを伴うものだと繰り返し指摘してきました。この間、市民プール及び体育館管理における協定違反問題や、駐車場管理者による不適切な会計処理が発覚し、わが党の指摘が現実となりました。ところが今回、市長は、西部地域交流センター、男女共同参画推進センター、健康づくりサポートセンター、ロボスクエア、祇園駅及び呉服町駅路上自転車駐車場、きらめき通り自転車駐車場、九電記念体育館の指定管理者に民間企業を指定することを提案したのであります。直営をやめて指定管理者制度を初めて導入する健康づくりサポートセンターについては、大手ゼネコン・鹿島建設のグループ企業と福岡市医師会との共同事業体が競争なしの1者応募で選定されています。九電記念体育館の指定管理者は非公募で九電関連会社が選定されています。当局が説明してきた公平、公正な選定に反すると言わなければなりません。また、駐輪場の管理はJRグループ企業や、福岡地所や7社会が出資する「福岡新都心開発株式会社」が選定されていますが、シルバー人材センターから仕事を奪うことは認められません。もともと指定管理者制度は、財界の要求を受けて「官から民へ」のかけ声のもと、国、地方自治体の業務、施設を民間に開放してビジネスチャンスをふやすという戦略にもとづいて導入されたものです。行政責任の放棄と営利優先によって様々な問題を引き起こしている指定管理者制度は抜本的に見直し、市民生活に関わる公共施設の管理運営を原則直営に戻すべきであります。

したがって、わが党は、指定管理者に民間企業を指定する議案8件に反対致します。


次に、議案第228号、給与条例改正案等並びに給与関連の各補正予算案についてです。

今回、福岡市人事委員会は「民間準拠」を理由に4年連続となる給与引き下げを勧告しました。そもそも人事委員会は公務員が労働基本権を剥奪された代償措置の役割を担っているのであって、マイナス勧告などあり得ません。しかしながら、市長はこれを受けて平均年間給与で3万8,000円の引き下げと、住居手当の月額500円の引き下げの提案をしたのであります。これによってこの10年間で年収が平均54万円、高校教員等では73万円、幼稚園教員で60万円も減少し、職員の生活設計は大きく狂わされています。さらに、国家公務員の退職金を400万円引き下げる法が可決されたことを受け、本市においても退職金カットが検討されています。市長は自らの給与を大幅に引き上げながら、職員には給与を引き下げ、モチベーションは高めよといっても無理があります。賃下げではなく、住民奉仕の行政を充実させることこそ、市民が市役所に求めていることであります。また、本市職員の給与引き下げは、非正規職員や委託労働者、関連労働者の賃金に連動するのはもちろん、広く民間に深刻な影響を及ぼすものであり、デフレ不況のさなかに許されないことです。住民奉仕の公務労働を破壊し、地域経済を冷え込ませる給与引き下げは撤回すべきであり、わが党は反対致します。


次に、今議会に提案されている、地域主権改革関連法の施行に伴って、各種施設等の設備や運営基準等を定める新たな条例案28件のうち、議案第202号、児童福祉施設の設備及び運営の基準を定める条例案についてです。

今回定める保育所の設備や運営の最低基準について、当局は従来の基準と同じだと説明しております。福祉施設等の最低基準については、国が全国どこでも等しく一定水準以上であることを保障してきたことは当然であり、このいわゆるナショナルミニマムを放棄し、最低基準を撤廃した地域主権改革一括法に対して、わが党は強く反対しました。現にこの法に基づいて、保育所の面積基準を引き下げる自治体も現われるなか、本市は保育所基準を現状維持としました。しかしながら、これまでの最低基準は戦後すぐ制定されたもので、諸外国と比較しても異常に低い水準にとどまっており、現場からは抜本的な改善を求める声があがっています。今回基準案はこうした願いに応える改善には程遠いものと言わなければなりません。保育室の面積が乳児一人あたり1.65㎡などという最低基準ぎりぎりの現場では、狭い保育室に詰め込まれた子どもたちが精神的に不安定になりがちで噛みつきなどトラブルが多く、安全に保育できる条件とは程遠いのが現状です。また、保育士1人にゼロ歳児3人などという基準通りの保育士配置では、一人ひとりの子どもと向き合うことが困難です。当局はこうした実情を把握しながら何の対策も講じないばかりか、待機児解消を口実にいっそうの詰め込みを保育所に押し付けているのであります。わが党は、児童福祉審議会の付帯意見の趣旨を踏まえて、保育所基準を引き上げ、財政措置も拡充して、豊かな保育を保障する取り組みを強化するよう要求しましたが、市長は国に要望するというばかりで応えようとしませんでした。したがって、わが党は保育所の基準を定める本条例案に賛成しがたいのであります。あわせて、障害児通所支援事業および入所施設等の基準条例案についても同様の理由から反対致します。


以上でわが党の反対討論を終わります。


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