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議会報告

2021年予算議会

予算案・関連議案についての反対討論

2021年3月26日 山口湧人議員の反対討論

私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に上程されております諸議案のうち、議案第30号ないし33号、37号ないし40号、42号、44号ないし48号、50号、52号、54号、56号、59号ないし61号、63号ないし68号、72号、73号、84号、90号、92号、93号、97号、100号、105号ないし107号について反対し、討論を行います。

議案第30号についてわが党は、大型開発への態度の違いを脇に置き、いったんそれらの事業をストップして、今は新型コロナウイルス感染症への対策を最優先にすべきであるとして、予算の組替えを市長に対して求める動議を、条例予算特別委員会で提案いたしました。政治的立場の違いを超えて取り組むよう呼びかけましたが、残念ながら多数の同意を得られませんでした。

従いまして、ここでは市長が提案した原案について取り上げます。わが党の意見につきましては、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べていますので、ここではその基本点について述べます。


新型コロナウイルス感染症について緊急事態宣言は解除されたとはいえ、新年度中に集団免疫を獲得する見込みはなく、一昨日は福岡初の変異株が確認されました。引き続きこの感染症から市民の命と暮らしを守ることは最優先の課題であり、いわば市政に対する従来の立場を超えて力を合わせるべき問題です。ワクチン頼みではなく、検査を大幅に拡大して、高齢者をはじめとする市民の命を守りながら、感染を抑え込むことが自治体に求められます。

わが党は、高齢者施設や医療機関での社会的検査の抜本的充実、感染急増地域で住民全体を対象にした面的検査の拡大、子ども施設での無料検査の実施などを求めましたが、市長はいずれも検査能力に限りがあると言って拒みました。感染が少し落ち着くと手をゆるめ、検査能力を遊ばせておきながら「限りがある」などという言い訳は通用しません。

コロナで経営難に陥っている医療機関の減収補填についても、市長は安定的な経営確保を「国に要望する」というだけで、市独自の手立ては全く打とうとしませんでした。

コロナによって中小企業が大きな打撃を受け、地域経済が危機に瀕しているというのに、市長はもう一度持続化給付金を出すように国に求めることすら拒否しました。

エッセンシャルワーカーへの特別給付金や学生への支援金についても、市長は“現状の施策で十分だろう”と言わんばかりの態度で、改善するそぶりすら見せませんでした。文化・芸術の活動をしている人たちへの支援については直接支援をしないばかりか、新年度、九州交響楽団への補助金を200万円も減額するのをはじめ文化部門全体の補助金を削減することが分科会審査でわかりました。ドイツの文化担当大臣は「アーティストは生命維持に不可欠の存在だ」と述べコロナ禍での支援を強化しましたが、髙島市長は文化・芸術をただの「ぜいたく品」だとしか見ていないのでありましょうか。

感染を抑え込み、地域の経済や文化を守るために市長が全力をあげている姿が見えない――これが審議の中で浮き彫りとなったのであります。


他方で、コロナ禍によって不要不急であることが明白となった施策の見直しは、あまりにも不十分でした。

ウォーターフロント地区の再整備については、「見直し」をするというものの、計画そのものは続けようとしています。

「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」については、オフィスビルの需要が減少しており、空室率が、分水嶺とされる5%に接近・突破してしまっているにも関わらず、無責任に続けようとしています。

コロナにより市政全体の税収減が見込まれ、多くの部門が予算の縮減、事業の見直しをしている中で、人工島事業についてはコロナの影響に基づく見直しを全く行わず、立地交付金を含め新年度も120億円もの巨費を投じようとしています。まさに「聖域」扱いです。

世界水泳選手権・福岡大会については、本市負担は当初見込みの35億円から95億円に膨れ上がっており、そのうち新年度だけでも実に約37億円もの予算が組まれています。「開催するときにはコロナが収束していて、50万人が国内外からやってくる」というデタラメな前提に立ち、しかも、コロナ対応のための予算や医療関係者の動員すら検討されていないことも、わが党の総会質疑でわかりました。

さらに、「GoTo」など遠距離の人の移動が感染を拡大したという証拠が次々専門家から指摘されているにも関わらず、市長は「ワーケーション推進」などといって、そうした遠距離からの人の移動を煽る事業を新年度打ち上げています。

これら不要不急の事業をそのままにしておいて、「コロナ対策を最優先にして市民の命とくらしを守る」という今自治体がなすべき最も喫緊の課題に真剣に取り組んでいる、とは到底言えないことは明らかであります。


わが党は代表質問において、市政運営の前提となる2つの問題について提起しました。


第一は、気候変動対策です。温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を政府よりも10年早く実現するためには、社会のあらゆる側面において急速かつ広範な、前例のないシステム移行が必要になります。本市の再生可能エネルギーの普及率を現行の8%から大幅に引き上げるとともに、温室効果ガスの発生源となる大量の業務床を生み出す「天神ビッグバン」や「フライトシェイム」と呼ばれる航空機燃料の大量消費を前提にしたインバウンドなど、「実質ゼロ」の目標に見合うよう市の関連施策や計画全体を見直すよう市長に求めました。しかし市長は具体的なことには何も踏み込みませんでした。「実質ゼロ」は掛け声だけです。

気候変動対策の目標だけを打ち上げて計画をいっこうに具体化しない政治指導者たちに対し、環境活動家のグレタ・トゥンベリさんは「空虚な言葉や約束は沈黙より悪い」と痛烈に批判していますが、これはまさに髙島市長、あなたのことであります。


第二は、ジェンダー平等です。森喜朗氏の女性差別発言に見られるように、意思決定の場から女性を締め出している体質自体が問題視されているのに、本市の企業における女性管理職比率は10%、市役所における女性管理職比率は15%、市の審議会等委員への女性の参画率は35%ほどしかありません。新しい男女共同参画基本計画の策定に際して、男女同数をめざすとともに、市政のあらゆる場にその立場を貫くことを提起しましたが、市長は見直す姿勢を示しませんでした。

結局、市政運営の前提とすべき気候変動対策でも、ジェンダー平等でも、本市は大きく立ち遅れたままであります。


次に、わが党が反対する議案のうち、いくつかの問題について、その理由を明らかにしておきます。


第一に、ケアや社会保障についてです。

国民健康保険について、市長は今年度、10年越しの公約破りを強行し、史上最高水準の保険料を被保険者に押し付けています。さらに新年度の保険料について、被保険者がコロナ禍で大きな打撃を受けているにもかかわらず40歳から64歳までに係る「介護分」を約1000円も引き上げようとしています。コロナで生活が苦しくなっている中で、一人当たりの平均保険料は過去最高となることが分科会審査で明らかになっており、このような値上げは断じて認められません。

介護保険については、新年度から始まるとされる新しい介護保険事業計画案において、介護保険料が基準額で年1766円の値上げが打ち出されています。自民党・公明党政権によって75歳以上の医療費も2倍にする法案が国会にかけられており、高齢者にとってあまりにもむごい負担増だと言わねばなりません。また、ヤングケアラーについても、他の自治体が支援条例などを定める中で、市として独自の調査すらしない無策ぶりがわが党の補足質疑で暴露されました。

生活保護については、自民党・公明党政権が切り下げた水準が違法であるという画期的な判決が大阪地裁であったにもかかわらず、わが党の質問に対して髙島市長はこの水準を「適切に定められた」などと答弁しました。また、大きな社会問題になっている扶養照会も、昨年度本市で3000件行われながら実際に援助できたのは12件しかなく、照会の必要性は全くないことが分科会審査で浮き彫りとなりましたが、扶養照会を実施しない立場には立とうとしませんでした。これでは保護受給者の実態に心を寄せた市独自の施策などできようはずもありません。

障害者施策については、障害者の就労支援に対して事業所への支援や職員の待遇改善に本市としてまともな手立てが取られていないことが補足質疑で明らかとなりました。

住宅政策については市営住宅の応募927戸に対して1万人を超える人が申し込むなど応募が殺到しているにも関わらず、新年度も新規建設はゼロのままです。最大4万円の支援が受けられる家賃低廉化補助もわが党の論戦と市民の世論の前にようやく始まりましたが、5戸しか対象にならない上に、補助の実績は1件もないことが分科会審査で判明しました。髙島市長は“住宅は今後余るのだから民間市場に任せておけばいい”ということを市長選挙でも公言してきましたが、そうした姿勢が住宅政策の貧困として如実に現れたものです。

保育については、昨年10月1日時点で未入所児童数は1665人にのぼるにも関わらず、新年度、市は認可保育園を500人分しか整備しないことが審議で明らかになりました。また保育士は大手で雇われている人も含めて平均賃金は、全産業平均と比べて依然10万円も低いことが政府統計でわかっていますが、市は分科会審査で勝手に企業規模が小さい範囲だけに切り縮めて比較し、あたかも差がほとんど無いかのような印象操作をしました。こんなずさんな認識のまま、市として待遇改善に背を向け続けるのは許されません。

上下水道についても、わが党は料金の減免を提案しましたが、市は応じませんでした。生活困窮に陥った人を早期に発見するため、水道料金の滞納から生活自立支援センターなどにつなぐとされていますが、全市で3万件近い給水停止があったにもかかわらず、実際に連絡を取ったのはたった2件しかなかったことが分科会審査でわかりました。あまりにも後ろ向きの姿勢であります。

このように、コロナによって、「自己責任」を押し付ける菅政権をはじめ、新自由主義的な政策がいかにケアや社会保障を粗末にしてきたかがはっきりしてきたにも関わらず、髙島市長の新年度予算案と議案はその路線を何ら反省せず、同じ道を暴走し続けています。


第二に、地域経済についてです。

コロナ禍で高島市長が推進している企業の呼び込みやインバウンドの推進など、外需頼みの経済政策が成り立たなくなっています。こうしたもと、内需の拡大、とりわけ中小零細事業者の支援に思い切って力を集中した経済政策が必要となっています。ところが、新年度、融資枠については拡充されたものの、それを除いた「中小企業の経営基盤の強化と持続的発展の促進」のための予算は2億円程度にとどまり、わずか650万円の増額しかありません。市内中小企業の6割を占める小規模企業者の多くはお金を借りて返す体力さえなく、これでは直接支援が全く足りません。わが党は中小企業予算の抜本増を求めましたが、市長は応じようとしませんでした。

経済波及効果の高い住宅リフォーム助成についても拒否し、市が発注した工事や仕事で働く労働者に十分な賃金を保証する「公契約条例」については“国がやること”だと後ろ向きの姿勢を示し続けています。

市長が強調する「感染防止と社会経済活動の両立」の「社会経済活動」とは相変わらず旧態依然の、インバウンドや大型開発で外から人や企業を大量に呼び込むことでしかなく、コロナをきっかけに地域循環型へと経済政策のイノベーションを起こすことは全く念頭にないようです。


第三に、教育についてです。

髙島市政になって10年以上全く拡大されなかった少人数学級が、コロナ対策ということでようやく暫定的にではありますが、全学年に拡大されることになりました。しかし、教員を全く増やさず、今いる加配教員の振替えで対応しようとしております。わが党は、総会質疑で現在でも教員の負担は限界であり、人員を増やさずに対応すれば現場はパンクすることを警告しましたが、教育長は聞く耳を持ちませんでした。

留守家庭子ども会などをこども未来局から教育委員会に所管替えする問題についても、保育と教育の意義が異なる以上、教育委員会が保育行政をするのは難しいのではないのかと質しましたが、こども未来局長は「保育と教育の共通の目標に向かって充実が図れる」と根拠のない答弁をするばかりでした。今回の所管替えが、留守家庭子ども会を放課後遊び場づくり事業と一体にして、基準や専門性を緩め、麻生教育サービスやテノ・サポートなどの営利企業が参入できる場にしていく突破口ではないかという疑念がぬぐえません。

知的障害対応の特別支援学校について、教室が学級編成の標準に対して86も不足するにもかかわらず、教育委員会は「教室は足りている」という認識のまま、高等部を2校作るということを口実にして、さらなる学校の増設を拒んだのであります。

車椅子の子どもが地元の学校で学ぶ問題についてもわが党は補足質疑で取り上げましたが、教育長はエレベーターの設置をしぶり続けました。これは障害者差別解消条例が市に義務づけている合理的配慮を欠いております。また、設置によって地域の住民のバリアフリーの避難所としても活用できる契機になるという福祉のまちづくり条例の精神を無視したものです。そして何よりも「地元の学校で学びたい」というこの子の切実な願いに応えようとしておりません。

人権侵害の校則、いわゆる「ブラック校則」についても、スカート丈や髪型についての細かい規制がなぜ必要か説明を求めたものの、「社会通念」だというだけで、客観的な基準を示すことができませんでした。それどころか、他の自治体ではセクハラだと認定されている下着検査や、眉毛・髪の毛の規制に違反した子どもの授業を受ける権利を奪うことを「教育的指導の範囲」だと開き直りました。人権侵害を正そうとしない教育委員会の姿勢は絶対に許されません。


第四に、市政運営およびその他の問題についてです。

コロナでの10万円の特別定額給付金の支給をパソナに丸投げし、あげくに対応しきれなくなった尻拭いを市職員に手伝わせていたことが大きな問題となりました。住居確保給付金の支給業務についても同様の事態が発生しており、わが党は分科会で追及しましたが、市職員がパソナの下請けをすることについて、市は「問題ない」という答弁をしました。行政のあり方として異常という他ありません。

米軍による福岡空港の土壌汚染について、わが党は補足質疑で質しましたが、市はあくまでもその原因を米軍だとは認めようとしない上に、空港整備の一環であるから本市が負担するのは当然という答弁を繰り返しました。板付基地の返還を求める自治体のトップとして実に情けない姿勢です。

平和施策についても、核兵器禁止条約が1月に発効したという歴史的画期を迎える中で、同条約への日本政府の批准を市長が直接国に求めることや非核自治体宣言を行うことをわが党として提案しましたが、市長は応じようとしませんでした。市民の運動が高揚しつつある平和資料館の設置についても、既存の展示などで十分だとする姿勢に終始しました。

このように、多くの点にわたって述べてきましたが、市民の立場から見て問題の多い予算案と関連諸議案に、わが党として賛成することはできません。


以上でわが党の反対討論を終わります。


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