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日本共産党福岡市議団の特集記事福岡市「行革プラン」は撤回を

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2012年11月 日本共産党福岡市議団

市政報告資料

福岡市「行革プラン素案」について

10月22日、福岡市議会決算特別委員会総会での宮本秀国議員の質問。市が打ち出した、九州交響楽団やスポーツ大会への補助金の廃止、私学助成の廃止、市立幼稚園の廃園、婦人会館の廃止など具体的項目をあげて追及し、「撤回すべきだ」と迫ったのに対し、高島宗一郎市長は「やめるべきはやめる」と冷たく答弁し、市民いじめの大計画を進める決意を表しました。

1、市民いじめの大計画

福岡市は10月に「行財政改革プラン(素案)」を発表し、市議会第1委員会に「事務事業の効率化・スリム化と健全な財政運営に向けた主な取組み検討項目」(市ホームページに掲載、以下「検討項目」)を報告しました。

これは、81項目にわたって行政運営の効率化や行政サービスの見直しなどを列記したもの。各種補助金の廃止や公共料金値上げ、公共施設の廃止など、これまで以上に踏み込んだ内容となっており、福祉、医療、教育、文化などあらゆる分野で、市民に大きな影響を与えるものです。まさに「市民いじめ大計画」というべき内容で、すでに関係者に不安と怒りの声が広がっています。

「行革プラン素案」は「これまでの行政運営の仕組みや発想、手法を抜本的に見直します」「効率的で筋肉質な市役所に生まれ変わる」と打ち上げており、かつてない冷酷非情な切り捨てが強行されようとしています。市民生活に影響する主な内容を見てみましょう。

(1)補助金の廃止・見直し
項目検討事項2012年度予算額
九州交響楽団への補助金見直し1億6,000万円
各種スポーツ大会開催・選手派遣への補助金あり方検討2,000万円
私立学校補助金(高校22校、小中15校)廃止5,103万円
住宅用太陽光発電システム設置補助見直し1億5,000万円
生ごみ処理機購入補助廃止600万円
① 九州交響楽団補助金

九響は、来年創立60周年を迎える老舗、九州唯一のプロオーケストラで、福岡市を拠点に九州各地を中心に年間約130回の演奏活動を行っています。福岡市文化賞、西日本文化賞、文部大臣地域文化功労賞、福岡県文化賞などを受賞しています。福岡市は「音楽文化の発展・振興に大きく寄与している財団法人九州交響楽団の運営に対して補助する」(要綱2条)として毎年1億6,000万円の補助金を交付しています。これを市は「見直し」と言って削減しようとしています。九響は公益財団法人への移行を目指し、累積赤字を解消するため、賞与カットや募金などに取り組んでいますが、福岡市2011年度包括外部監査は九響の単年度収支が黒字になったことを理由に「補助金の減額を検討すべき」との報告を出しました。しかし、補助金削減は九響の経営努力に水を差すもので、演奏家の確保や演奏活動にも影響しかねない重大問題です。

文化を切り捨てる高島市長の姿勢は、少年科学文化会館ホールをなくそうとしている問題と共通しています。

② 各種スポーツ大会補助金

スポーツ振興を目的に、福岡市で開催されるスポーツ大会の開催経費や、全国・世界規模の大会の出場選手に対して交付されるものです。今回市は「あり方を検討する」としていますが、そもそもどのスポーツ大会も収益を目的にしているものではなく、少額であっても補助金が廃止・削減されれば開催や出場そのものが危ぶまれることも考えられます。

開催諸経費
U-15 全国選抜ジュニアテニス大会補助金(九州テニス協会)81万円
全日本選抜柔道体重別選手権大会補助金(九州柔道協会)140万円
金鷲旗玉竜旗高校柔剣道大会補助金(西日本新聞社)650万円
九州一周駅伝競走大会補助金(西日本新聞社)18万4,000円
ビーチバレーボール大会補助金(実行委員会)45万5,000円
福岡トライアスロンフェスタ補助金(実行委員会)81万3,000円
福岡国際マラソン選手権大会補助金(実行委員会)703万2,000円
福岡市志賀島金印マラソン大会補助金(実行委員会)49万1,000円
諸大会開催補助金(アマチュアスポーツ団体)90万1,000円※
出場経費
国際スポーツ補助金(各種団体)45万9,000円※
小中学生体育大会出場補助金(2011年度小中学生154人)69万8,000円
県民体育大会出場補助金(出場選手団体)117万5,000円
体育大会出場参加奨励費補助金(選手団)10万4,000円

(金額は2011年度決算額。ただし※印は2012年度予算額)


福岡市は人口の割に屋外・屋内とも公共のスポーツ施設が少なく、使いたくても使えないのが常態化しており、スポーツ後進自治体というのが実態ですが、さらに補助金までカットしようとする高島市長の姿勢は許されません。

③ 私立学校補助金(私学助成)

私立学校の教育条件の維持向上及び修学上の経済的負担の軽減に資するとともに、経営の健全性を高めることが目的です。とくに福岡市では公立が少なく、市内高校生の45%が私学に通っているように、高校教育を私学に大きく依存しています。さらに公立高校無償化と同時に私学の高校生には就学支援金の支給が始まりましたが、重い保護者負担が残っているのが現状です。だからこそ私学助成は重要な役割をもっています。福岡県内・市内の関係者が毎年増額を求めて署名運動に取り組んでいます。補助金カットは学校経営を圧迫するとともに保護者負担増にも直結するもので許されません。

④ その他

「検討項目」には、補助金全体の見直しとして、「補助金ガイドライン(仮称)を策定」、「終期設定、外部審査、原則公募化等のルール検討」と明記されています。今年3月公表された包括外部監査結果報告書は、福岡市の全300件の補助金を監査し意見を出しましたが、福祉、保育、産業振興など市民生活にかかわる補助金がカットされる危険性があります。

(2)公共料金の値上げ、減免制度の廃止など
項目検討事項
市民センター・体育館・文化施設・公園・美術館・博物館等利用料見直し、
65歳以上減免の廃止、
駐車料有料化
動物園利用料見直し、
65歳以上減免の廃止
図書館駐車料有料化
がん検診自己負担増
福祉乗車券(障害者むけ)見直し
特定優良賃貸住宅供給事業(新婚・子育て世帯家賃補助)事業完了
高齢者向け優良賃貸住宅供給事業(家賃補助)事業完了
① がん検診

福岡市は市民が各区保健福祉センターや医療機関でがん検診を受診する際の費用の一部を助成しています。2005年に自己負担増がありましたが、大腸がん検診が500円、その他、子宮頸がん、乳がん、胃がん、肺がん、前立腺がんの検診が無料~1800円で出来ます。また70歳以上の高齢者は無料です。合計で年間約16万人が利用しています。この自己負担増が狙われています。

② その他

具体的な内容は不明ですが、

・高齢者、障害者施策は「選択と集中の観点による重点化(個人給付から事業への転換)」

・子育て支援制度は「国制度の変更に伴い、本市独自の減免制度や助成制度等の再構築を行う」

と明記されています。これは、高齢者乗車券(敬老パス)や敬老金・敬老祝金、障害者福祉手当、保育料減免、子ども医療費助成、就学援助などが、切り捨ての対象となる可能性があるということです。

(3)公共施設などの廃止・縮小
項目検討事項
市立幼稚園廃園
婦人会館(あいれふ8・9階)廃止
農村センター廃止
市営渡船志賀島航路減便
保健環境学習室(まもるーむ)移転統合
ロボスクエア移転統合
急患診療所(歯科)あり方検討
福岡サンパレス(ホール・会議室)あり方検討
市営駐車場あり方検討
ヨットハーバー効率化
公立保育所民営化(すでに実施中)
松濤園(介護施設)民間活力の活用
海の中道青少年海の家・背振少年自然の家指定管理者導入
博物館・美術館・アジア美術館指定管理者導入
図書館分館に指定管理者導入
今宿野外活動センター見直し
水産加工センター見直し

2、「行財政改革プラン」の4つの問題点

市民いじめの大計画を盛り込んだ「行財政改革プラン(素案)」とはどのようなものでしょうか。

10月決算議会の宮本議員の質問に対して高島市長は大要次のように答弁しました。

「財政状況は今後ますます厳しくなっていくと見込まれている。市民の活力を高めて、教育や福祉、暮らしに力を入れていくためにも、将来を見据えた都市機能の強化や地域経済の活性化、都市の成長が必要。政策推進プランを作って、やめるものはやめていかなければならない。総点検だ。これが行財政改革プラン。スクラップ・アンド・ビルドではなく、ビルド・アンド・スクラップの精神で財源を確保しつつ、持続可能な財政構造を構築することとしている。」

ここには4つの重大問題があります。

(1)反省なし ~「4年間で851億円の財源不足」と言うが

一つめは、これまでの行財政運営に何の反省も総括もないことです。

「行革プラン素案」は、税収が伸びない一方で社会保障関係費や老朽化した公共施設の維持経費が増加するとして、「このままでは重要事業の推進や新たな課題への対応のために使える財源が大幅に減少する見込みです。そのため、徹底した見直しを行い、財源の確保に取り組む」と述べています。

財源不足について「行革プラン素案」は具体的数字を示していませんが、市が公表した「福岡市財政の見通し 平成24年5月試算版」によると、「仮に、平成24年度と同等の投資水準を維持するには、現在の試算では平成25年度から平成28年度までの4年間で、新たに851億円の財源を確保する必要がある」と明記されています。

重要事業の推進や新たな課題への対応のために投入可能な一般財源の推移

▲「福岡市財政の見通し 平成24年5月試算版」17ページより


新聞報道によると、「検討項目」の81項目だけでは851億円に足りないとも言われています。こうしたことを前提に、市長も「今後の財政は厳しい」と強調しています。

確かに、福岡市は一人あたり市債残高が171万円(2011年度末時点)と、大阪市に次いで政令市で2番目に多く、借金財政は深刻です。

しかしそれは一体誰のせいでしょうか。着工以来18年間にわたって借金を増やし続けてきた人工島事業こそ借金財政の元凶です。市民の反対を押し切ってムダな大型開発を推進してきた歴代市政と市議会の推進勢力の責任は重大ですが、「行革プラン素案」には反省の一言もありません。無駄な開発推進と借金増発の一方で、市内総生産も経済成長率も市民所得もこの10年間横ばい・下落傾向を続け、税収も増えない―これほど破たんがはっきりしていることはありませんが、その総括は一切ないのが行革プラン素案です。

いくら「財源不足」だからと言っても、無反省なまま、市民サービス切り捨てと負担増を押し付けることに市民は納得しません。

(2)財界奉仕 ~市民サービス削って開発推進に税金を使う狙い

二つめは、財界奉仕のための財源づくりだということです。

「行革プラン素案」は「福岡市の成長戦略を実現するために必要な財源を確保する」(策定の趣旨)、「選択と集中により市民生活や将来の成長にとって真に必要な施策・事業への重点化」(はじめに)などと言います。

つまり、市民いじめによって生みだした財源を「成長戦略」にあてようというのです。

市長が言う「政策推進プラン」とは、現在市が策定を進めている「福岡市総合計画」と「福岡市基本計画」(2022年まで)を具体化する実施計画と位置付けられたもので、「アジアのリーダー都市」「稼げる都市」を目指して様々な都市開発や施設整備などをおこなうことが盛り込まれようとしています。

すでにこの2年間、財界関係者が過半数を占めた「人工島未来フォーラム」による新たな破たん救済の「提言」、須崎ふ頭を人が集まる都市的エリアにするなど湾岸部を大規模に作りかえる「博多港長期構想」、天神と博多駅、ウオーターフロント地区で税金も使って再開発を促進する「特定都市再生緊急整備地域」指定、などなど財界の意に沿った大型開発プロジェクトが次々打ち出されています。

その背景には、高島市長が政治資金パーティーを開いたことに見られるように、財界・大企業・大銀行の思惑通りの市政運営を行い、その見返りを求めるという癒着の構図があります。

そもそも「成長戦略」と言えば大企業の儲けづくりの大型公共事業推進と大企業減税のこと。一部の大企業は潤っても市民生活とは無関係です。実際、この間の財界いいなり政治のもとで景気は冷え込み、中小企業・業者の倒産・廃業が後を絶たず、雇用破壊が広がり、経済成長も止まり、市民の暮らしもますます困難を強いられ、財政も悪化するという悪循環に陥っています。市長は「都市の成長が生活の質の向上につながる」などと言っていますが、全くの詭弁です。

破たん済みの財界いいなり政治をいっそう進めるというのはあまりにも無謀です。

(3)行政責任の放棄 ~かつてない異常さ

三つめに、かつてない異常さで行政責任を放棄する内容だということです。

これまで市は「財政健全化」を推進し、その結果「プライマリーバランスは12年連続で黒字を達成(歳出-公債費<歳入-市債収入)」、「健全化判断比率はいずれも改善し、基準を下回る水準」となっています。

財政指標が一定の改善傾向にあるのは、福祉切り捨てや市民負担増を強行し、福祉・教育分野の施策を抑制してきたからです。また「市債発行抑制」を口実に生活密着型の公共事業を減らし、保育所や特別養護老人ホーム、市営住宅、児童館、文化・スポーツ施設などの新増設や学校校舎の改修、エアコン設置など市民が願う公共施設の整備をことごとく後回しにしてきたからです。高齢者、介護、障害者、保育の施策も国いいなりで、独自の充実はほとんどありません。

さらに、もともと政令市一少ない市職員をさらに減らし続け、公務職場の非正規雇用を拡大するなど、自治体リストラを強行してきました。

「行革プラン素案」は、そのうえさらに「行政サービスの見直し」「公共施設の見直し」と行うとして、市民に犠牲を押し付けようとしています。

また「人件費の抑制、組織のスリム化」と言って、いっそうの職員減らしと退職金カットまで打ち出していますが、これでは職員が「全体の奉仕者」として職務に専念することをますます難しくすることになります。人減らしによる多忙化や非正規化をいっそう加速させるやり方は、市民サービスの低下をもたらすにとどまらず、職員不祥事を根絶する取り組みにも逆行するものです。

こんな自治体の役割と責任を放棄するやり方は許されません。

(4)構造改革路線へリードする「北川委員会」

四つは、破たん済みの構造改革路線にしがみつく勢力が推進していることです。

市は新たな行財政改革プランを策定するため、今年5月に「自立分権型行財政改革に関する有識者会議」(座長・北川正恭早稲田大学大学院教授・元三重県知事・現福岡市顧問)=いわゆる「北川委員会」を立ち上げました。北川氏は、財界人とともに小泉構造改革を後押しした「21世紀臨調(新しい日本をつくる国民会議)」の共同代表で、マニフェスト選挙を推進してきた人物。財界と深いつながりがあり、道州制推進論者です。

10月までに7回の会議が開かれてきましたが、北川座長を先頭に、市の提案をいっそう悪い方向へ進めよとけしかけています。弱肉強食の構造改革路線・自己責任論の立場から、福岡市の行財政を破壊へとリードする役割を果たすものです。その狙いは、財界が究極の行政改革と位置づける道州制の導入に他なりません。

しかも、「北川委員会」の内容は市民にほとんど知らされていないばかりか、議会にもまともに報告されていません。市民の知らないところで重大問題が話し合われているのです。


3、行革プランに反対し市民本位の市政実現へがんばります

言うまでもなく、地方自治体の本旨は住民の暮らしを守り福祉を増進させることです。高島市長の行革プランは、この憲法と地方自治法の精神を真正面から否定し、反省なし・財界奉仕・責任放棄、市民いじめの大計画です。

行革プランの背景には、民主党が完全に自民党化し、構造改革路線を再び推進させようとする反動的流れが国政で強まりつつあることがあります。同じような大規模な市民切り捨ての行革プランは、維新の会与党の大阪府と大阪市、神奈川県など各地で大問題となっており、市民の大きな反対運動が高まっています。

日本共産党は市民いじめの行革に断固反対してがんばります。

財政建て直しは市民本位で

財源不足というなら、造れば造るだけ赤字を増やす人工島の埋め立てこそ直ちに中止すべきです。また、人工島の土地を売るために1社最大30億円も投げ渡す企業立地交付金制度を廃止すべきです。

どんなに財源不足でも削ってはいけないのが憲法25条の生存権に基づく社会保障です。国や県の制度を補完する市独自の個人給付や助成制度は、さらに充実することこそ求められています。例えば、国保や介護保険などの負担軽減、中学生までの医療費無料化の拡充、敬老無料パスの復活などを行えば、直接家計を応援するとともに、将来不安の解消にもつながるものです。

また、保育所や特別養護老人ホームの新設を進めれば、入所待ちを解消するとともに、地元中小企業・業者の仕事おこしにもつながります。景気対策として有効な住宅リフォーム助成制度を創設すれば、地元業者の仕事と雇用が増えます。

こうした「地域循環型」「内需拡大型」の経済対策を強化することによって税収を増やす、市民本位の財政再建こそ求められています。これを実行する市政を実現させるため、力を合わせましょう。


行革プラン素案は来年3月頃「原案」としてまとめられ、パブリックコメントを経て決定し、2013年度から実施されようとしています。一部は2013年度当初予算案に盛り込まれます。どれだけ多くの市民がこの内容を知り、声をあげるかにかかっています。

日本共産党市議団は市民の共同を広げるため、いっそうがんばります。

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